バカロレア哲学「より短い時間働けば、よりよく生きられるのか?」①

どうもこんばんはー!

先日フランスの大学入学試験のバカロレアの、哲学の過去問&解答集から1問丸まる翻訳していいという許可をいただいてから数週間。ようやく翻訳第一段が終了いたしましたー!

過去問と解答は、

 

    問題 → 問題文の用語の定義付けと、解答の際の注意点 → 解答例

 

という構成になっていまして。今後何度かに分けて翻訳して、こちらのブログで紹介していこうと考えています。

さて、まずはお礼から。mayonaka(twitter ID: @m_minuit)さん、この度は協力を申し出てくださり、誠にありがとうございました。

今回翻訳するにあたって、私の拙いフランス語と日本語力じゃ不十分だ!ということで、ブログとツイッターとで協力してくださる方を募りまして。「こんな怪しい企画に協力してくれる方いるんかいな」とダメ元で募ったところ、なんと!ツイッターでmayonkaさん(@m_minuit)さんという方が協力を申し出てくださいまして!言ってみるもんですね...

というわけで、今回を含め以降バカロレア哲学シリーズは、mayonakaさんと共同で翻訳していきます。本当にご協力ありがとうございます✨

それでは、本題へ!今回は「問題文の定義付けと注意点」についてです。

 

2016年度科学系バカロレア哲学科目

問題:Travailler moins, est-ce vivre mieux? 

「より短い時間働けば、より良く生きられるのか?」

■論題の定義付け

「より短い時間働く」とは

・「働く」という語は、「拷問の道具」を意味するラテン語に由来している。そして、それを語源とする「労働」という単語は、「人間の必要を満たすために、物事をより便利になるように変える全ての活動」を意味している。また、語源であるラテン語は、努力と困難、また労働によりもたらされる苦しみを表している。

・この広い意味での定義は、極めて限定的である社会的な定義とは異なる。社会的な定義では、「働く」とは「報酬がともなう、またはもたらされる職業または雇用」を意味している。

・「より少なく働く」ということは、「より短い時間働く」ということであり、量的な観点から労働を捉えるということである。

 

「より良く生きる」とは

・「生きる」とは単に生き延びること、つまり生物学的な生命活動とは異なる。「生きる」ということは、ただ単に生命を維持し、それを可能な限り伸ばすということではない。質的な観点から、生きるということを考える必要がある。

・「より良く生きる」という表現は「より」という比較表現を含んでいる。 私たちがより少なく働いたとして、何をもって私たちの生活はより良くなっているといえるのだろうか?良い人生の基準とは何なのだろう?

 

■問題提起を明確にして、構成を組み立てる

問題提起

・労働の質と人生の質の関係こそが、このテーマによって問いかけられている問題であり、問題提起はこの部分から生じている。

・労働と人生は互いに相容れないのか、それとも両者は両立することができるのかということが問題提起に当たるからである。

私たちが働くことに費やす時間は、生物として生きるのに必要なことのために犠牲にしている時間に過ぎず、より良く生きるためにはできる限りこの時間を短くしなければならないのだろうか?

しかし、何をもって労働の時間は人生に含まれない時間、または悪い人生を送っている時間となるのだろうか?働いている時間は、自己実現のために役に立たないのだろうか?

もしそうでないとしたら、人生において労働時間を減らすことは、どのような点で私たちをより幸福に、またはより自由にするのだろうか?

 

解答の構成

・まずはじめに、より良く生きるためには必ず働かないといけないのかを検討しよう。労働は人間の本質ではないのだろうか?

・次に、人間的な生活を送るためには、なぜ労働時間を減らさないといけないのか?ということについて検討しよう。

・そして最後に、より良く生きるということについて考える時、なぜ私たちは労働と人生を分けて考えることを拒否するのか?について検討しよう。

 

気をつけるべきポイント

「労働」という言葉の定義を、社会的な定義だけに限定しないよう気をつけよう。この問題は、「労働」をより広い意味で検討するよう問いかけているのだ。

 

 Annabac 2017 Philosophie (c) éditions Hatier, France より

 

 

というわけで、解答に取り掛かる前の「定義付けと注意点」でした!

いやー。高校3年生の時の私には、解けないだろうなぁとしみじみしております。というか、今でも解けない!笑 「労働」を雇用とか狭い定義の方でとって、スパーン!!と赤点不合格になりそうです。

でもきっと、こんな試験と授業があったら面白いだろうなぁ。 

おわりっ